自身の誕生日が近づいたある日のこと。
毎年、どこか的外れな誕生日プレゼントをくれる旦那に、私はあらかじめ釘をさした。
「今年は何もいらないからね」
たぶん、「夫の優しさを無下にしている」と思う人もいるだろう。でも、“ありがた迷惑”を受け取る側にも、それなりの苦労があるのです。
そして迎えた誕生日当日。
旦那宛てに宅配便が届いた。
帰宅した旦那は、嬉しそうに荷物を開封する。中から出てきたのは、大袋に入った高カカオチョコレートだった。

最近の旦那は、中途半端な健康志向生活を送っている。高カカオチョコレートも、その流れで自分用に買ったのだろう。
そう思っていた。
ところが旦那は満面の笑みで言った。
「誕生日おめでとう! 食べたかったでしょう!」
「プレゼントが全くないのもねーと思って」
まさかの私への誕生日プレゼントだった。
「いらないって言ったのに……」
ハッキリ言ってやろうと思ったけど、ため息しか出てこなかった。
それにしても、なぜ高カカオチョコレートなのだろう。
過去の自分の発言や行動を振り返ってみたけれど、思い当たる節がない。
そもそもスーパーで買えるチョコレートだし、一度にもらうには量が多すぎる。しかも私は、高カカオよりミルクたっぷりのチョコレートの方が好きだ。
何もかもが少しずつズレている。
それからしばらくして、旦那とスーパーでお菓子売り場を歩いていた。
「お菓子も高くなったよね」
「チョコなんて、びっくりする値段だよ」
そう口にした瞬間、記憶がよみがえった。
数か月前にも同じような会話をしたことがあったのだ。
そのとき旦那は、「食べたいなら買えば?」と言ってくれた。
でも私は、「高いからいいや」と買わなかった。
どうやら旦那は、その出来事を覚えていたらしい。
私が欲しかったのは、高カカオチョコレートではない。
棚上にあった「高級チョコレート」だった。
けれど旦那の中では、
「欲しかったのに我慢していた」
↓
「誕生日にプレゼントしよう」
という流れになったのだろう。
着眼点は優しい。
ただ、やっぱり少しだけズレている。
そんなところも含めて、うちの旦那らしいなと思う。
